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【歯科医師が解説】歯茎からの出血は「警告サイン」―放置すると起こる5つの危険と正しい対処法
この記事を書いた人
広川歯科医院 院長 廣川雅之(歯科医師)
はじめに:「歯磨きで血が出る」を放置していませんか?
「歯磨きのときに歯茎から血が出るけど、痛くないから大丈夫」
そう思っていませんか?実は、歯茎からの出血は、お口の中で「傷口」ができているサインです。
この記事では、歯科医師として20年以上の臨床経験を持つ私が、以下の内容を詳しく解説します:
- 出血が示す本当の意味
- 放置した場合のリスク
- 今日からできる正しい対処法
- 歯科医院で受けるべき検査と治療
歯茎から血が出る原因:「出血=潰瘍」という事実
出血は「傷口」のサイン
歯茎からの出血は、単に「歯茎が弱っている」のではありません。
医学的には、歯茎の表面を守る「上皮(じょうひ)」というバリアが壊れ、「潰瘍(かいよう)」ができている状態を示しています。
| 用語 | わかりやすい説明 |
|---|---|
| 上皮(じょうひ) | 歯茎の表面を守るバリア機能を持つ薄い膜 |
| 潰瘍(かいよう) | 上皮が壊れ、内部が露出した傷口の状態 |

潰瘍の大きさは「手のひらサイズ」になることも
中程度の歯周病の方の場合、すべての歯の周囲で起きている潰瘍を合計すると、面積は手のひらと同じくらい(約72cm²)になることがあります。
これは、手のひら全体に無数の傷ができて、そこに汚れた水がずっと触れ続けているようなものです。
なぜ出血を放置してはいけないのか:5つの危険
危険1:細菌が体内に侵入する
潰瘍があると、そこから歯周病菌が血管を通じて全身に広がる可能性があります。これを「菌血症(きんけつしょう)」と呼びます。
危険2:悪性度の高い細菌が増殖する
出血がある場所では、レッドコンプレックスと呼ばれる悪性度の高い歯周病菌群が繁殖しやすくなります。
| 細菌グループ | 悪性度 | 特徴 |
|---|---|---|
| レッドコンプレックス | 最高 | 血を好む、骨を溶かす |
| オレンジコンプレックス | 高 | レッドを助長する |
| その他 | 低〜中 | 通常の口腔細菌 |
危険3:PG菌による継続的な攻撃
歯周病菌の中でも特に危険なPG菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)は、タンパク質分解酵素を持っています。
この酵素は、パイナップルで舌がピリピリするのと同じ原理で、歯茎のバリアを溶かし続けます。一度潰瘍ができると、PG菌はその傷を自然治癒させないように攻撃し続けるのです。
危険4:全身疾患との関連
歯周病は以下の全身疾患との関連が報告されています:
- 糖尿病
- 心臓疾患
- 脳卒中
- 誤嚥性肺炎
- 早産・低体重児出産
危険5:気づいたときには進行している
歯周病は「サイレントディジーズ(静かな病気)」と呼ばれ、痛みがないまま進行します。痛みを感じた時には、すでに骨が大きく溶けていることが少なくありません。
「クリーニング」と「歯周病治療」は違います
よくある誤解
多くの患者さんは、「歯石を取ってきれいにしてもらう」という目的で来院されます。
しかし、1回のクリーニングで潰瘍(傷口)が治ることはほとんどありません。
見える歯石と見えない歯石
| 歯石の種類 | 場所 | 影響 |
|---|---|---|
| 縁上歯石(えんじょうしせき) | 歯茎の上(目に見える) | 審美的な問題、軽度の影響 |
| 縁下歯石(えんかしせき) | 歯茎の中(目に見えない) | 歯周病の主な原因 |
見えない歯石(縁下歯石)は、見える歯石の何倍も歯周病に悪影響を与えます。これを除去しないと、根本的な改善は期待できません。
今日からできる3つのセルフチェック
チェック1:出血の有無を確認する
歯磨き時やフロス使用時に出血がないか、2週間記録してみましょう。
チェック2:歯茎の変化を観察する
以下の変化がないか、鏡でチェックしてください:
- 歯が以前より長くなった気がする
- 歯と歯の間に隙間(黒い三角形)ができた
- 歯茎が赤く腫れている
- 歯茎を押すと膿が出る
チェック3:口臭をチェックする
歯周病が進行すると、特有の口臭が発生します。家族やパートナーに確認してもらうのも一つの方法です。
広川歯科医院で受けられる検査と治療
当院で実施している検査
- 歯周ポケット検査:歯と歯茎の溝の深さを測定
- 出血点の確認:どこに潰瘍があるかを特定
- レントゲン検査:骨の吸収状態を確認
- 動揺度検査:歯のぐらつきを確認
治療の流れ
- 初回:検査・診断・治療計画の説明
- 2〜4回目:歯石除去(スケーリング・SRP)
- 再評価:治療効果の確認
- メンテナンス:3〜6ヶ月ごとの定期管理
重要なのは「出血を止める=潰瘍を治す」ことです。1回の治療で終わりではなく、継続的なケアが必要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 痛くないのに治療が必要ですか?
A. はい、必要です。歯周病は痛みなく進行する病気です。痛みが出たときには、すでにかなり進行している可能性があります。
Q2. 1回のクリーニングで治りますか?
A. ほとんどの場合、治りません。潰瘍を治し、悪性度の高い細菌を減らすには、複数回の治療と継続的なケアが必要です。
Q3. 歯周病は遺伝しますか?
A. 遺伝的な要因はあります。ただし、適切なケアで予防・管理することが可能です。
Q4. 市販の歯周病用歯磨き粉は効果がありますか?
A. 補助的な効果はあります。しかし、すでに形成された歯石や深い場所の細菌は、歯磨き粉だけでは除去できません。
Q5. 治療にはいくらかかりますか?
A. 保険適用の治療であれば、検査・歯石除去で1回あたり1,500〜3,000円程度が目安です(3割負担の場合)。
まとめ:出血を「軽く見ない」ことが歯を守る第一歩
歯茎からの出血は、単なる「弱り」ではなく、お口の中に傷口(潰瘍)があるサインです。
今日からできること:
- ✅ 出血の有無を2週間記録する
- ✅ 歯茎の変化を鏡でチェックする
- ✅ 歯科医院で検査を受ける
「痛くないから大丈夫」ではなく、「出血があるから確認しよう」という意識を持つことが、あなたの歯を長く守る第一歩です。
歯茎の出血が気になる方へ
広川歯科医院では、歯周病の検査・治療を行っております。お気軽にご相談ください。
📍 広川歯科医院
所在地:兵庫県西宮市(門戸厄神)
公式サイト:https://hirokawa-dc.com/
参考文献・出典
- 日本歯周病学会「歯周病の診断と治療に関するガイドライン」
- サンスター株式会社「歯周病と全身疾患」
- 厚生労働省「e-ヘルスネット 歯周病」
この記事の医学的監修
広川歯科医院 院長 廣川雅之(歯科医師)
2011年より広川歯科医院を開設。歯周病治療・予防歯科を専門とし、20年以上の臨床経験を持つ。
最終更新日:2025年12月


