糖尿病と歯周病の関係|なぜなりやすいのか、症状やメカニズムを歯科医師がわかりやすく解説します

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糖尿病と歯周病の関係|なぜなりやすい?症状・メカニズムをわかりやすく解説

結論

糖尿病の方は歯周病になりやすく、歯周病があると血糖値が上がりやすくなります。お互いが影響し合う関係です。でも裏を返せば、歯周病をきちんと治療することで、血糖コントロールの改善も期待できます。「歯茎の調子が気になる」と感じたら、まず歯科で一度お口の状態を確認してみてください。


糖尿病の方が歯周病になりやすい理由

糖尿病の方は、そうでない方に比べて歯周病にかかるリスクが約2.6倍高いとされています。これは大規模な疫学調査で報告されている数字です。

でも、なぜ糖尿病だと歯周病になりやすいのでしょうか。

免疫の働きが弱くなる

血糖値が高い状態が続くと、細菌と戦う白血球の働きが低下します。お口の中には何百種類もの細菌がいますが、白血球がしっかり働いていれば、歯周病菌が増えすぎることはありません。

ところが糖尿病の方は、この「守る力」が弱くなっているため、歯周病菌が繁殖しやすくなるのです。

お口が乾きやすくなる

糖尿病の方は唾液の量が少なくなる傾向があります。唾液にはお口の中を洗い流す「自浄作用」がありますが、お口が乾くとこの作用が弱まり、細菌が増えやすい環境になります。

歯周病は「6番目の合併症」

糖尿病の合併症といえば、神経障害・網膜症・腎症の三大合併症がよく知られています。1993年にアメリカの歯周病学者Löe先生が歯周病を「糖尿病の6番目の合併症」と提唱しました。

それ以来、糖尿病の管理において歯周病のケアも重要だという認識が広がっています。日本糖尿病学会のガイドライン(2024年版)でも、歯周病は糖尿病の併存疾患として位置づけられています。


歯周病が血糖値を上げてしまうメカニズム

糖尿病 → 歯周病だけでなく、歯周病 → 糖尿病の悪化という逆方向の影響もあります。

歯周病菌の毒素が全身に影響する

歯周病が進行すると、歯茎の中で炎症が起きています。この炎症によって生まれる物質(TNF-αなどの炎症性物質)が血管を通じて全身に広がり、インスリンの効きを悪くしてしまうことがわかっています。

インスリンは血糖値を下げるホルモンです。その効きが悪くなるということは、血糖値が下がりにくくなるということ。つまり歯周病があるだけで、糖尿病のコントロールが難しくなる可能性があるのです。

血糖を下げるホルモンを分解してしまう

2022年の研究では、歯周病菌が作る酵素が、血糖値を下げるホルモン(インクレチン)を分解してしまうことも報告されました。歯周病菌が「血糖値を下げる仕組み」を直接邪魔しているということです。

お互いが影響し合う「悪循環」

まとめると、こういう流れになります。

糖尿病で免疫が弱くなる → 歯周病が進む → 炎症物質がインスリンの効きを悪くする → 血糖値が上がる → さらに免疫が弱くなる → さらに歯周病が進む…

この悪循環を断ち切るためには、糖尿病の治療と歯周病の治療を並行して進めることが大切です。


こんな症状はありませんか?糖尿病の方が注意したいお口のサイン

糖尿病の方で、以下のような症状がある場合は、歯周病が進行しているかもしれません。

  • 歯みがきのときに歯茎から血が出る
  • 歯茎が赤っぽい、ぷよぷよしている
  • 朝起きたとき、お口の中がネバネバする
  • 口臭が気になるようになった
  • 歯がグラグラしてきた気がする
  • 以前より歯が長くなったように見える
  • 硬いものが噛みにくくなった

これらは歯周病の典型的なサインです。特に糖尿病の方は進行が早い傾向があるため、「たぶん大丈夫だろう」と思わず、早めに歯科で診てもらうことをおすすめします。


歯周病を治療すると血糖値は改善する?

結論から言うと、歯周病を治療することでHbA1cの改善が期待できます

大規模な研究で効果が確認されています

日本糖尿病学会のガイドライン(2024年版)では、35件の臨床試験・3,249名を対象にした研究の分析結果として、歯周病の治療後にHbA1cが約0.5%改善したと報告されています。

0.5%と聞くと小さく感じるかもしれません。でも、たとえばHbA1cが7.5%の方が7.0%に近づくということ。日本糖尿病学会が合併症予防の目標としているのはHbA1c 7.0%未満ですから、0.5%の改善はとても大きな意味があります

ガイドラインで最も強く推奨されています

この歯周治療の有効性は、日本糖尿病学会のガイドラインで「推奨グレードA」に位置づけられています。これは「十分なエビデンスがあり、強く推奨する」という最も強い推奨です。

ただし、歯周病治療だけでHbA1cが劇的に下がるわけではありません。内科の治療、食事、運動と合わせて取り組むことで、よりよい結果が期待できます。


糖尿病の方が歯医者を受診するときに知っておいてほしいこと

「歯医者に行きたいけど、糖尿病があるから不安」という方も多いと思います。事前に知っておくと安心なことをまとめました。

お薬手帳を持っていきましょう

糖尿病のお薬の種類は、歯科治療の計画に影響します。たとえば血糖を下げるお薬を飲んでいる場合、治療中の低血糖に配慮する必要があります。

お薬手帳をお持ちいただけると、安全に治療を進めることができます。

麻酔や抜歯のときに注意すること

糖尿病の方でも、歯科の麻酔は基本的に問題なく使えます。ただし、血糖コントロールが不安定な場合は、麻酔や抜歯のタイミングを調整することがあります。

HbA1cの値や最近の体調について、受診時にお伝えいただけると助かります。

通院の頻度はどのくらい?

糖尿病の方の場合、歯周病学会のガイドラインでは3ヶ月以内の間隔でのメンテナンスが推奨されています。血糖コントロールの状態によっては、もう少し短い間隔(1〜2ヶ月ごと)をお勧めすることもあります。

「内科と同じように、歯科にも定期的に通う」という習慣が、歯周病の再発を防ぐ鍵になります。


当院での糖尿病患者さんの歯周病治療

当院では、糖尿病の患者さんの歯周病治療に力を入れています。

日本糖尿病協会の登録歯科医

当院の院長は日本糖尿病協会の登録歯科医です。糖尿病の方のお口の状態を、全身の状態と合わせて診ることができます。臨床歯周病学会にも所属しており、歯周病の専門的な知識をもとに治療にあたっています。

お口の細菌を「見える化」する

当院では位相差顕微鏡を使って、お口の中の細菌を実際に画面で見ていただくことができます。

「歯周病菌がいます」と言葉で伝えるだけでは実感が湧きにくいものです。でも、実際に動いている細菌を見ていただくと、「こんなにいるんだ」と驚かれる方がほとんど。治療やセルフケアへのモチベーションが大きく変わります。

メンテナンス専用チェア6台

当院にはメンテナンス専用のチェアが6台あります。治療用チェアとは別に、定期管理のためのスペースを確保しています。

糖尿病の方に推奨される3ヶ月以内のメンテナンスにも、しっかり対応できる体制です。

内科・糖尿病内科の先生との連携

2026年6月からは、内科・糖尿病内科の先生と歯科が患者さんの情報を共有しながら一緒に管理できる仕組みが始まります。当院では、歯科での治療経過を内科・糖尿病内科の先生にお伝えする報告文書を作成できる体制を整えています。

医科歯科連携の詳しい仕組みについては、こちらの記事もご覧ください。

糖尿病と歯周病|歯周治療でHbA1cが改善するエビデンスと当院の医科歯科連携体制


よくあるご質問

Q1. 糖尿病があると歯周病になりやすいのですか?

はい。大規模な疫学調査で、糖尿病の方は歯周病の発症率が約2.6倍高いと報告されています。免疫の低下やお口の乾燥が主な原因です。

Q2. 歯周病を治したら血糖値は下がりますか?

歯周病の治療後にHbA1cが約0.5%改善したという研究報告があり、日本糖尿病学会のガイドラインでも歯周治療が推奨されています。ただし個人差がありますので、内科の治療と合わせて取り組むことが大切です。

Q3. 歯医者に行くとき、糖尿病のことは伝えた方がいいですか?

はい、必ずお伝えください。お薬の種類やHbA1cの値によって、治療計画を調整する必要があります。お薬手帳をお持ちいただけると安心です。

Q4. 糖尿病の薬を飲んでいても歯科の麻酔は大丈夫ですか?

基本的に問題ありません。ただし、血糖値を下げるお薬を服用中の方は、治療中の低血糖に配慮する必要がありますので、事前にお薬の情報をお伝えください。

Q5. 歯周病の治療は痛いですか?

当院では表面麻酔や極細針を使用して、痛みを最小限に抑えています。基本治療(歯石除去やクリーニング)であれば、強い痛みを感じることはほとんどありません。

Q6. 歯周病の治療にはどのくらい期間がかかりますか?

歯周病の進行度によりますが、中等度であれば2〜3ヶ月程度、5〜6回の通院が目安です。その後は定期メンテナンスに移行します。

Q7. メンテナンスはどのくらいの間隔で通えばいいですか?

糖尿病の方は3ヶ月以内の間隔が推奨されています。内科の定期通院と同じように、歯科にも定期的にお越しいただくことで、歯周病の再発を防ぎます。当院はメンテナンス専用チェア6台で対応しています。

Q8. 広川歯科医院は糖尿病の患者の歯周病治療に対応していますか?

はい。院長は日本糖尿病協会の登録歯科医であり、糖尿病の方の歯周病管理に力を入れています。内科・糖尿病内科の先生からの紹介状がなくても受診いただけます。

Q9. 歯周病の検査は保険でできますか?

はい、歯周ポケット検査やレントゲン撮影などの歯周病検査は保険適用です。基本的な歯周治療も保険で受けていただけます。

Q10. 糖尿病があるのですが、抜歯はできますか?

血糖コントロールの状態によります。HbA1cの値や全身の状態を確認した上で、安全に処置が行えると判断した場合に実施します。必要に応じて内科・糖尿病内科の先生と連携することもあります。


まとめ|糖尿病と歯周病、どちらも「一緒に」ケアすることが大切です

糖尿病と歯周病は、お互いに影響し合う関係にあります。

  • 糖尿病があると歯周病になりやすい
  • 歯周病があると血糖値が上がりやすくなる
  • 歯周病を治療するとHbA1cの改善が期待できる

だからこそ、糖尿病の治療と歯周病の治療は並行して進めることが大切です。

「美味しくご飯が食べれてますか?」——これは当院の院長が患者さんによくお聞きする言葉です。歯の状態は食事の質に、食事の質は全身の状態につながっています。

糖尿病で通院中の方、お口の状態が気になっている方。まずは一度、お口の状態を確認してみませんか。一緒に考えていきましょう。


参考文献

[1] 日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024 第16章「糖尿病と歯周病」. https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/16.pdf

[2] Löe H. Periodontal disease. The sixth complication of diabetes mellitus. Diabetes Care. 1993;16(1):329-334.

[3] Simpson TC, et al. Treatment of periodontitis for glycaemic control in people with diabetes mellitus. Cochrane Database Syst Rev. 2022.(35件RCT・3,249名メタ解析)

[4] Ohara-Nemoto Y, et al. J Biol Chem. 2022;298(2):101536.(歯周病菌DPP7によるインクレチン分解)

[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット.「口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連」. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-01-006.html

[6] 厚生労働省. 令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要. 2024年.



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監修:廣川 雅之
歯学博士(大阪大学)・広川歯科医院 院長



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