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インプラントベーシックセミナー
インプラントのセミナーに参加しました
副院長の名村です。
先日、「エビデンスに基づいたベーシックインプラントロジー」というセミナーに参加しました。今回の参加のきっかけは、院長が同じ先生のアドバンスコースを受講し、勧められたこと、また、日々進化するインプラント治療の最新の基礎知識をアップデートしたいと考えたためです。
これからインプラント治療を始める先生はもちろん、すでに経験のある先生が再確認するのにも適した内容で、大変勉強になりました。
セミナー概要
- セミナー名:エビデンスに基づいたベーシックインプラントロジー
- 講師:小田師巳先生
(おだデンタルクリニック理事長、岡山大学歯学部卒・同大学院修了、日本口腔インプラント学会専門医、ITI Fellow、iCEED主宰) - 開催日時:2025年2月9日
- 開催場所:大阪市中央区南区久宝寺 iCEED研修室
- 主催:iCEED
- 対象者:歯科医師
このセミナーでは、下顎臼歯部へのインプラント治療を安全・確実に行うために必要なエビデンス(術前診断、外科手技、印象、補綴装置、メインテナンス)を理解し、模型実習を通じて一連の外科手技を習得することを目的とした実践的なカリキュラムが組まれていました。
学びと気づき
座学での学び
座学では、インプラント治療において押さえておくべき基礎知識をエビデンスベースで学びました。印象的だったのは、データに基づいた手技の解説が行われたことです。講師の先生が実際の症例を紹介しながら、論文データと照らし合わせて説明してくださったことで、より理解を深めることができました。
また、セミナーの詳しい内容として以下のようなテーマが取り上げられました。
- 片側遊離端欠損患者の欠損拡大防止には、インプラントが有効なのか
- 1歯中間欠損において、インプラント治療はブリッジよりも有効であるか
- 生物学的幅径とソーサライゼーション
- 適切なインプラントの埋入深度
- インプラントの標準長径・幅径
- 6mmのショートインプラント仕様の是非
- 上部構造の適切なカントゥア
- カンチレバーBrで考慮するべき事項
- 上部構造連結の是非
片側遊離端欠損患者の欠損拡大防止には、インプラントが有効なのか
日本補綴歯科学会のガイドラインにて、遊離端欠損において、咀嚼機能を回復するためには、部分床義歯よりインプラントを推奨して良いと思われる。また、患者立脚型アウトカムを用いた評価においても、インプラントの方が部分床義歯より患者のQOLを向上できるとおもわれる。と記載されており片側片側片側遊離端欠損患者の欠損拡大防止には、インプラントが有効と言えます。
1歯中間欠損において、インプラント治療はブリッジよりも有効であるか
少数歯中間欠損における8年間の累積生存率ではインプラントの方がブリッジに比べ生存確率が高いというデータが出ていました。生活歯と失活歯において少数歯中間欠損における隣隣在歯のトラブル発生率は生活歯の方が生存率が高いというデータが出ており、生活歯のブリッジの予後は、インプラントと同等であると考えられるため、生活歯同士のブリッジを意味もなくインプラントに変える必要性はないとのことでした。
生物学的幅径とは、歯槽骨頂から歯肉溝底部までの距離を指し、天然歯では約2mm、インプラントでは約3mmとされています。これは細菌感染から組織を保護するための重要な構造であり、適切なインプラントの埋入深度を考慮する際に不可欠な要素となります。
ソーサライゼーションとは、インプラント体とアバットメントの接合部に生じる皿状の骨吸収現象です。インプラントの構造上、わずかな隙間が生じ、マイクロリーケージが発生することで骨吸収が起こることが分かっています。インプラントの接続形態にはバッドジョイント、ティッシュレベル、プラットフォームスイッチングがあり、骨吸収のリスクはバッドジョイント、プラットフォームスイッチング、ティッシュレベルの順で低くなります。小田先生は、基本的にティッシュレベルを推奨されていました。もちろん症例によって違う接続様式のものを選択することもあります。
インプラントの標準長径・幅径については、長く太いほど良さそうというイメージがありますが、臨床データでは長径8mm、幅径ナロータイプで十分な結果が得られるとされています。
6mmのショートインプラントについては、論文によって評価が分かれるため、安易に選択せず、適応症例を慎重に見極めた上で使用すべきとのことでした。
上部構造の形態については、ストレートおよびコンベックスが適切であり、コンケーブ形態では清掃不良が生じやすく、インプラント周囲炎のリスクが高まるため避けるべきとの指摘がありました。
カンチレバーについては、チッピングなどの補綴の不具合が出る可能性が高いため第一選択とすべきではないが、シングルインプラントの場合、延長ポンティックの方向(近心・遠心)に関わらず、5.5mm程度であれば問題は生じにくいとのことでした。
上部構造の設計では、臼歯部3歯欠損の場合、最もトラブルが少ないのは「インプラント体2本+連結構造」、次に「インプラント体3本+非連結構造」、最もトラブルが多いのは「インプラント体3本+連結構造」でした。その主な原因は清掃性の問題でした。ただし、咬合力が強い患者には3本埋入を推奨するため、術前診断が重要となります。
実習での経験
実習では、模型を使ったインプラント埋入を実際に行いました。手を動かしながら治療の流れを体験できたことで、知識だけでなく手技の感覚も掴むことができました。特にありがたかったのは、インストラクターの先生が多く配置されており、困った際にすぐアドバイスをいただけたことです。細かな手技についても、どうすればスムーズに進められるかを丁寧に指導していただきました。
左の写真は小田先生が実際に診療で使用している器具のセットです。一つ一つの器具にこだわりをもっておられました。
実習ではインプラントを2本埋入しました。一本は少し見えますが、もう一本は歯肉の中に隠れています。
まとめ
今回のセミナーでは、エビデンスに基づいた知識と実践的な技術の両方を学ぶことができ、とても有意義な時間となりました。特に実習では、実際の診療を想定し、小田先生が実際に使用している器具を用いて、模型上で歯肉の切開から剥離、粘膜弁の展開の仕方、実機を用いたインプラント体の埋入、粘膜弁の縫合をおこない、それぞれの手技に対して細かく説明があり、わからなければインストラクターの先生がすぐに駆けつけて指導してくださいました。
また、参加者は若手のドクターが多く、皆さん今回のセミナーを受けてスキルを上げようと熱心に受講されている先生ばかりで、いい意味で緊張感のある雰囲気で集中して受けることができました。実習の間も、経験の浅い先生でも質問しやすい環境が整っていたので、とても安心してセミナーを受講することができました。インストラクターの先生方も丁寧に指導してくださり、基本的なことから応用的なことまで幅広く学ぶことができました。
これからインプラント治療を学びたい先生方や、基本を再確認したい先生方にもおすすめできるセミナーでした。今後も積極的にセミナーなどに参加して、自分自身のスキルアップを行い、日々の診療に活かしていきたいと思います!